ボールとポールを取ってホールを付けたい

男の身体のままで死にたくはない。

5年前

Instagramの投稿ついでに連携させていたFacebookを開いたら、『5年前の思い出を振り返りましょう』とか何とかで自分の過去の投稿がトップに上がってきました。厳密には丸5年と数日前、不思議なご縁で出演が叶ったとあるオーケストラの本番当日の写真でした。

 

5年前の私はまだ20代。初めて錠剤を服用して3ヶ月といったところでしょうか。それも健康を害するのが怖くて、飲み方は非常に不規則且つ少量。事実上のノンホルと何も変わらない状態です。それでも一応は20代。そろそろアラフォーに差し掛かる身なので、当時は*1それなりに若かったんだろうなと思いながら写真を見ていきました。

 

……あれ、5年経って10の位が変わった割には老けてなくね?

 

私だけ時が止まったのだろうか。額の生え際に至っては今の方が若いまである。当時着ていたスーツは学部入学祝(=最大体重に程近い頃)で作ったものなので、今も変わらぬ化け物肩幅に更にパッドが足されていて作画がおかしなことに。体重の実数値は今とほぼ同じなんだけど。そのせいでより太く見えていることや解像度が粗めでもわかる顎髭の剃り痕の青さを含めると、トータルでは現在の姿は当時-1歳くらいはしているのかも知れない。

昨日書いた顔つき云々の話もそうだけど、ふと過去の自分と比較してみると、思ったよりも変わっている……なんてことがちょっとはあるもんですね。今まで約10年分のFacebookにアップした写真を消してはいないのですが、それ故にわかったこと。過去を捨てるも抱えていくも個々の考え。でも、過去が残っていたからこそ見えたものがあった。そこは否定したくないかな。

*1:とは言っても実年齢+10〜15歳に見られるので、到底20代の外見では無かっただろうと思います。

顔つき

最近ね、なんだか変わってきている気がするんですよ。気のせいレベル……をほんの少しだけ逸脱しているような。それこそ思い込みかな。

 

寝っ転がりながらスマホタブレットの画面に映った顔や、ドライヤーやスキンケアの際に見る鏡(あまり見たくはないけれど)。ふと笑顔を作ってみると、実母に近付いてきた感覚がある。フルメイクをすると実母似なのはわかっていたけれど、すっぴんでもかい。光が当たると流石に元々のゴツゴツした凹凸が見えてしまうのは仕方ない。ただ、マットに見せられれば(テカリを抑えらえれれば)やっぱり「違う」。*1治療前の自分の写真自体がそもそも少ないし髪型や髭の多寡も差があるので一概には言えません。でも、頬は前よりこけていないように感じます。*2少し太ったのもありますけどね。眉を整えるとかスキンケアとか、そういう取り組みも影響しているんだろうなぁ。

永らく思っていたんです。「どうせ顔つきなんて全く変わらないだろう」と。それが自分で鏡を見ても「なんか違う?」と思えるのは嬉しいものですよやっぱり。とは言え元がお察しなので男らしい顔つきではあります、そりゃあね。でも「実年齢+10~15歳のオッサン」から「オッサン……?いやお兄さん……のような年齢不詳っぽい何か」に変わりつつある。Beforeを考えると十分喜ばしい変化だと思っています。パスには程遠くても、小さな変化が積み重なったものがいつか自信になるのでしょうか。

 

でもな、スマホカメラ、あの縦長に引き伸ばされるのだけはどうにかしれくれ!!写真に慣れることは当分無さそうです。

*1:なんかね、自分の姿を残したくない感覚っていうのは昔っからあったんですよ。わかる人いるかな。

*2:余談ですが体重の推移について。高校時代の最大体重から修士卒あたりまでで15kg落としてからしばらくキープしていたのですが、この1年ちょいで4~5kg増えてしまいまして。治療の影響や自身で敢えて脂肪を付けようと考えていたせいなので自業自得ではある。それでも-10kgくらい。

片袖の魚

観に行ってきましたよ、映画「片袖の魚」。トランスジェンダー当事者が主演ということを制作当初から押し出しており、当事者に絞ったオーディションや主演・イシヅカユウ氏の女性用スペース利用に関する問題など良くも悪くも公開前から話題の尽きない作品。前半日程はチケットが瞬殺で、本日ようやく予定が確保できた次第。

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【以下ネタバレ注意】

 

主人公は熱帯魚を取り扱う会社に勤務するトランスジェンダー当事者。声は女性のそれだがエラや頬に名残を持つ"彼女"を女性として扱い、また同僚が当たり前のように車椅子を使っているなど"ワケアリ"の人も広く受け入れている偏見の無い会社のようです。職場には女性が多く規模も小さいことや、また本人のパス度からも、他の社員の同意を取り付け易かったことが窺えます。

そんな主人公ですが、仕事をしている中で何度か「リード」される場面があります。

『2階にだれでもトイレがありますので』

『もしかして男性?やっぱり!手が大きいからそうかなと思って』

そうしたシーンに同期する泡の音。顔を水につけるようなその音は水中にいるような息苦しさを表すと同時に「聞きたくない」と聴覚を遮断したい意味合いもあって重ねられたのではなかろうか。『でも、心は女性です』と気丈に言い返しはするも、内にある本人の苦悩がシンプルな演出を通してありありと感じられます。同時に、我々MtFトランスジェンダー当事者としては日常の追体験でもある。一つ一つは短い場面ながら、リアリティが物凄かったです。

ただ、入れる魚のオススメでカクレクマノミを挙げてその生態を喋ってしまったのは自爆かなという気もしますが……。まぁ、知らない視聴者に向けてクマノミの説明をしないと、何故この魚が作品を通してずっと立ち現れ且つ本人が固執するのかがわからないのでやむを得ないといった所でしょうか。

 

見積の仕事で久々に地元に顔を出すことが決まると、なんと当時所属していたサッカー部の同期達との同窓会にも出席することに。旧友(そして恐らく思いを寄せていた相手)から電話がかかってきた時、咄嗟に声色を男性のそれに変えるシーンもまたリアルで、私としても身に覚えのあるものでした。昔の自身を知る相手、且つこちらの事情をはっきり伝えていないとなると、声を変えて生活していてもどうしても「変に思われないように」と低い声で話してしまう気持ちは共感できますね。私の場合は実家に電話する時がそれ。で、電話が終わったら終わったで「*1低い声を出そうと思えば出せてしまう」ことに自己嫌悪してしまう。

私は昔を知る相手との繋がりがかなり限られている身ではありますが、もっと交友関係が広かったらより気にするシチュエーションは増えていたろうなと想像します。

 

また、同窓会のことを新宿のバーに勤務する友人(演: 広畑りか)に相談するシーンで主人公が口に出した言葉。これも我が身に刺さるものでした。

『まだ完璧じゃない』

パス度とか身体の治療状況とか所作とか、ひいては生まれ持った臓器や身体機能に至るまで、色々な面で自分を『完璧』に女性と言い切れない。その絶望も孕んだネガティブ渦巻く心情。それがこの一言に表されていたと思います。

でも、仕事を終えてからは女性として着飾って同窓会に出向くんですよね。そこが主人公の持つ強さかと。いざという場面で「自分がそうしたい」ことに一歩踏み出せる。同窓会での『知らなかったらイケる』等といった悪意の無いイジりに耐え抜き、ずっと旧名で呼ぶ想い人に対して別れ際に*2今の名を告げ、彼が学生時代から取っておいたサッカーボールを譲られるも投げつけて"返却"する。最終的には地元への想いを振り切って、それがエンディングでのあの表情に繋がってくるのでしょうが、「よくできるなぁ……」というのが正直な感想です。

私だったら、服装はスーツのままか無難にパーカー・Tシャツ・デニムとかにして、髪は後ろで一つに括って声も低いままと、一貫して男として振る舞うと思います。現に私は対実家の際には髪をジェルでオールバックにする等の対策を施しています。ただ、作中では性別移行が『噂になって』いたようなので変に男装をするもの心証が悪かったのかも知れませんが。

 

総じて作中で描かれるMtFとしての「あるある」はとてもリアルなもので、これが1時間以上の作品だったら息苦しくて耐えられていたか自信はありません。女性ホルモンに錠剤だけでなく貼り薬も併用しているとか、上辺をなぞっただけでは決してできない描写ですしね。劇伴のストリングスがヴィオラというのもまた良いチョイス。C線の最低音がちょうど女性の声だと下限に当たる音域で、そこまで計算されていたのか……と。

親近感を覚える描写がある一方で、主人公と私とでは「自分にとって大事ないざという場面で一歩踏み出せるか否か」が対照的に感じられました。それ以前にフルタイムか否かも大きな違いではありますが、やはりこうした胆力の強さがないと性別移行を自分の望む所まで成し遂げるのは難しいということでもあるのでしょう。

 

いずれにせよ、「知る」という意味では今非常に適した作品の一つだと言えると私は思います。短い時間の中に非言語的な描写を中心に当事者のリアルな息苦しさが詰め込まれた本作は、是非トランスジェンダーを知らないという人にこそ観て頂きたいです。

 

冊子も後で読みます。
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*1:女性ホルモン治療では一度低くなった声を高く戻すことはできないので、元の声質+トレーニング頼みになる。

*2:結局最後の挨拶でも彼が新しい名前を呼ぶことはありませんでしたね。

1回目の副反応

接種から1日が経ち色々と副反応らしきものが表れてきたので、記録の為に記します。

 

打たれて10分後くらいから出てきた左手小指周辺のピリピリ感だけの状態は2時間後まで。それを過ぎると肘の辺りまで刺激を感じる範囲は広がってきました。この段階でシャワーを浴びる。3時間が経過した頃には、ホルモン注射の時にもよく体験している「あの」肩の重みを感じるようになってきました。4時間後から、ほんの僅かではあるものの乗り物酔いみたいな気分と眠気が出てきて、様子を見つつ5時間経過の時点で入眠。なお、普段に比べてだいぶ入眠時間は早い。

翌朝起床時の体温は35.8℃。14時間経過時点で肩の重みはホルモン注射のそれより強くなっており、腫れて熱を帯びているのがわかる。この時点で倦怠感は無く、寧ろ冷房の影響と思われる月・火曜日の方が身体はしんどかった気がする。

昼食を摂り20時間経過。食事前の体温が36.1℃。左肩は見て明らかにわかる腫れ方をしており、腕を肩より上の位置に持っていくのはかなり困難。そのままゆるゆると過ごしていたら24時間が経過し、その時点での体温は35.9℃でした。

 

と、これで終わった訳ではなく、夕食まで少し仮眠して起きると身体に強めの倦怠感が。体温はあろうことか36.5℃。私の平熱を考えると、微熱の入口とも言える高さに。四肢を中心にピリピリする感覚も発熱時のそれと酷似。冷房のある部屋にいる時間や日中にうつらうつらした時間が長かったことも影響はしていると思いますが、体温も含めて考えるとどうもそれだけではなさそう。継続してモニタリングが必要ではありますが、接種翌日の活動を制限される程の副反応ではない……即ち軽い部類であるように現時点では(20:45)思います。

 

でも実は、副反応がさほど強くなかったことを「悔しい」と感じてしまう自分もいるんですよね。弊社弊部署は女性比率が高いこともあってか、ワクチンの話題になるとほぼ必ず『女性の方が副反応が強いから』という発言が出てきます。エストロゲンが免疫反応を強くすると言われていることから、強い副反応は当該物質の血中濃度が高ければ生得的女性に限らずあり得ることだと言えます。事実、トレーナーの主任は明らかな発熱をして肩の痛みで何度も起きてしまう程だったとのこと。しかし、私にはそこまでの副反応は無かった。X染色体も免疫反応を強める一因と考えられていることや、私に起こった副反応が軽微なことから、やっぱり自分は身体男性であるという事実を突き付けられて悔しいのです。職場で副反応の話をしたらほぼ確実に『やっぱり男性だから弱かった』と言われるでしょうしね。

 

副反応が弱くて悔しいなどと言うと『女性を馬鹿にしている!』『女の苦しみも知らないで!』との非難は免れないとも思います。そうなのかも知れません。であっても、やはり生物学的な差に直面するとショックなものはショックなのです。

副反応の男女差は下記リンク先の記事をご参照ください。

www.asahi.com

COVID-19ワクチン接種 1回目

打たれてきましたファイザー製。弊社が業務委託している医師が営む病院にて、ありがたくも職域枠。駅からかなり歩くので、日傘があっても到着したら汗だくでした。

 

昨日までの倦怠感もだいぶ落ち着き体温も平熱。非接触式だと少し高く出るみたいだけど。到着して所属とワクチン接種の旨を申し出たら、即刻処置室前に案内されました。別の部署のご婦人2名が先客で待合室にいましたが、既に接種済のよう。

すると院長が登場し、椅子に座っている一人ひとりに問診をしていく。あのー、既往歴とか色々話すんですが……プライバシーを……プライバシーをください……。まぁ話したのは循環器のことだけ。『打っていけない病気は無い』の言葉が不安を和らげる。女性ホルモン治療のことは……言えませんわなそりゃ。業務委託ということは社として繋がっているということ。『おたくの社員さんでさ……』と密告されてしまえば、私は雇用を失いかねない。自分がかかっている各所の医師とは相談したし当然自己責任ですが、いざ打つと心配になりますね。予診票で空欄にしていた性別欄、院長の手であっさり男性にレ点をされてしまい、そのことに自分でも「あぁ、ここまでショックを受けるものなのか」と思うなど。

 

処置室に入ると一瞬で接種終了。刺される瞬間は痛いけれど、ホルモン注射に比べると痛みも時間も短くて呆気ないですね。

で、10分もしない内に左手の薬指〜小指にかけてがピリピリしてきました。肩が重い感覚はホルモン注射で慣れているけれど、*1未知の新薬なのでこれからどうなるか。ちょっと長めに休んで帰ります。

 

17:15以降の経過はTwitterや翌日の記事にて。

*1:そもそも反対の性ホルモンを入れている時点で、何を怖がっているんだという話ではある。

勤務800日

だからといって特に何もありませんが、こっそりと節目……もとい*1キリ番だったりしました。

普段はしない残業を毎日していると、あぁ繁忙期だなぁと実感します。ピークを越えてようやく下山に入りましたが、落ち着くのはもう少し先。それに、こういう時こそ緊張の糸が切れてしまわないように注意が必要です。……とか書いておいて切れかかっているので世話無いんですけど。

 

目下の悩みは倦怠感。先週までは全く無かったので、原因はほぼ特定できています。それは仕事ではなく冷房。3年前の胃腸炎と同じ轍を踏みそうになっているのが悔しい……!スタジオでの冷房直撃ってやつですまた。設定温度19℃って!!何故それで平気なのか……。例によって私の位置取りが悪かったので自業自得ですが、微熱(36.5〜7℃)が出ると流石に焦る。ワクチンはいよいよ明日ですよ?

取り敢えず、ちょっと食べ過ぎなくらいは食べることにして日付変更前には寝ます。必ず。辛いものはお預けで、消化の良い物を。睡眠不足のツケも来ているはずなんですよねこれ。明日を万全な体調で迎えられますように。

 

こういう時に、私の唯一の取り柄である「生半可な不調では食欲が落ちない」には感謝するばかり。

*1:世代がバレる。

冷凍食品

を、3日分ほど買い込みました。

 

私は普段、あまり冷凍食品って買わないんですよね。冷凍野菜は常日頃から使っていますが、出来合いのものはそんなに。同じようなものでも自分て仕込む方がコスパが良いので。

ただ、今回ばかりは話が別。ワクチン接種をいよいよ明後日に控え、副反応のことを考えると連休を丸々潰すつもりで備える必要があります。その為に出来合いの冷凍食品。食事を仕込む手間を限り無く減らして、ずっと臥せっているようなことになっても大丈夫なようにしておかないといけません。食費は嵩むがやむを得ない。

 

で、副反応とそれ以外の体調変化を見極めろと主治医に言われたばかりだというのに、今日は午後から微熱気味。36.5℃は人によっては平熱だけど、平熱の低い(35℃台)私にとってはここを超えればきつくなるライン。周期的なものなのか、昨日のスタジオでガンガンにかかっていた冷房に由来するのか、はたまた別の要因か。どれも思い当たる節があるので、幸先の悪い1週間の滑り出しになってしまいました。

取り敢えず今日は日付が変わる前に寝なければ……それが一番不調に影響している気がする。