ボールとポールを取ってホールを付けたい

男の身体のままで死にたくはない。

卒後~現在 2.実家を出てからジェンクリ初診まで

 実家時代まではアセクシュアルの悩みが主だったが、実家を出て一転トランスの悩みが前面に出てくる。タイトルのFromからToに3年3ヶ月半。

 

前職時代

 都内の某語学スクールにて学籍管理や行事運営等の多岐にわたる業務に従事。経営難ではあったが直属の上司の人柄に恵まれ、労働者のイロハを叩き込まれた。職員は10人程と超小規模であったが、その分意思の疎通も取り易く初めての事務仕事にも苦手意識を持てず取り組めた。

 時折実家に泊まってはいたものの、一人暮らしを始めたことにより原家族の目を逃れることができ日々だいぶ気が楽になった。買った物を実母に見られる危険性も無くなり、女装関連書籍やLGBTQ関連書籍を購入できるようになった。トランスジェンダー当事者のブログやSRSの情報を閲覧することが増えた。これら情報収集を通じて自身の生活を振り返る中で、身体を中心に違和感が強まってきた。それに耐えかねて、20164月に女性ホルモン剤個人輸入し服用を開始してしまった(もっと後かと思っていたが、輸入サイトの履歴を辿ると意外と早くに輸入していた)。最初はプレマリン、次いで抗男性ホルモン剤も購入しのちにダイアンも服用1~2ヶ月?で僅かながら胸の膨らみやしこりができ始め、ブツの反応も減ったので嬉しく感じた。一方で健康を損ないたくない思いも強かったので、服用量は朝晩0.5Tずつから始めて多い時でも朝晩1Tずつと少なめ。

 2017年より徐々に髪を伸ばし始めた。同年4月には初めて当事者向けのイベントに参加。かの「乙女塾」主催のメイク講座。受講者の中にはGID診断に向けて近々通院するという方もいたが、自分もそうしようとはこの頃は思えなかった。"典型的な当事者"には申し訳無い程度の違和感と思っていたので、フライングホルモンまでしていながら「本物ではないので諦めざるを得ない」と考えていた。と言うよりは、自身の男性的過ぎる外見から踏み切る自信を持てずにいた。同年5月には初めて「TOKYO RAINBOW PRIDE」に足を運んだ。これらを経て「少なくとも男ではない」と自認するに至った。

 

 職場では2017年度に入り組織変更がありトップが交代。私情を持ち込む・無茶な仕事量を要求・敢えて皆の目に付く所で大声での叱責・既存のツテを嫌い自身のツテばかり使いたがる等のことから職員や一部取引先は辟易。勤務実態の乏しい役員に横領の疑惑も。こうした状況下の同年6月に、「頭髪指導」事件が発生。詳しくは下記記事にて。

julia88h.hatenablog.com

 髪型へのこだわりや或いはカミングアウトという形で対抗もできただろうが、トップの言動からそれが受け入れられるとは思えずクビを言い渡されてもおかしくなかったので、泣く泣く従わざるを得なかった。耳が隠れない長さが必須となり、毎日ワックスないしジェルで固めるようにとまで言われた。業務上外部との接触も多く生徒のロールモデルたれとの要求が強かったこともありやむを得なかった。せめてもの抵抗として、髪型は刈り上げずマッシュ、ジェルで固めるとあまりに男性的になるのが嫌で頑としてワックスにこだわった。

 これら出来事から転職を決意。収入を維持する為に在職しながらだったので、見た目を変えられず男性として転職活動を実施。明らかに男性の外見で性別違和感を訴えても信じてもらえないであろうこと、当時は何とか中性的な男性として生きていけないかとも模索していたことから、面接でのカミングアウトも無ければLGBTフレンドリー企業を調べることも無かった。私のみが抱えている案件が多かったことや業務上の区切りから、年度替わりのタイミングでの転職を目指した。この入職時期の条件やキャリアチェンジをした経歴から転職活動は難航し、内定は20181月末であった。

 その傍ら、20177月より資金の目処が立ち髭脱毛を開始。その効果が出てきた2018年始より私服の移行を徐々に始め、ワイドパンツやドルマンスリーブのトップス等からレディース衣類を着るようになった。

 

現職入職

 20184月に現職である健診機関に転職し内勤の部署に配属。就業規則に服装規定は無いが、暗黙の了解なのか男性はスーツで女性はほぼ私服寄りのオフィスカジュアル。『新入職員の手引き』という独自冊子にはマナー本からの引用と思しきスーツ例が掲載されており、男性はそのような典型的な見た目の職員ばかり(お洒落スーツと口髭の管理職が各1名ずついるが、それでも浮いて見える)。業務の割り振り(女性のみが担当する報告書記入や営繕の業務がある)や部署編成(営業は男性が外勤・女性が内勤)から感じる性別役割分業の根付いた風土。下記が一例。

julia88h.hatenablog.com

 髪はワックスでまとめてから耳に掛けて長さを誤魔化しており、カミングアウトはしていない。前職時代の健康診断では血液検査が無かったので発覚しなかったが、雇入時健診にて肝機能で要受診との判定を受ける。同年5月下旬に保健師との面談(特定保健指導)にて思い当たる原因を尋ねられた。ホルモン剤によるものだろうとは思っていたが、「サプリメント服用によるものかも知れない」と誤魔化した。試用期間の間にカミングアウトでもしようものなら、後出しじゃんけんと言われ本採用されないのではと恐れた結果。また、同年7月中旬に開催された部署の飲み会にて課長代理より『(本名)さんもこれからどんどんおじさんになっていくから』と言われたことで、30歳を前に老いを本格的に意識。男のまま老いていき死んでいくことが耐え難いと感じ、男性であることにこれまでに無い程の嫌悪感を抱く。性器・体毛・体格・皮膚・衣服・社会的立場・周囲からの目といったあらゆる面で、男性として生きるのはもう限界だと思った。

 プライベートでは同年4月末に初めて行った美容室で女性的なカットを依頼。衣類では初めてスカートを購入し、下着も含めて私服の入れ替えを進行。5月のTOKYO RAINBOW PRIDEへの参加を機にSNS上で主にAce・Xの当事者と交流する機会が増え、当事者同士の会合にも足を運ぶようになった。それらを経て、自身の性別への違和感に向き合って身体的な治療も受けたいと考えるに至り、同年10月初診。なお、6月頃より化粧品を買い揃えて外出時のメイクを始め、9月には首から下の脱毛も開始している。

 

これが私のジェンクリ通院までの経緯。何で老いっていう現実を間近に見るまでわからいのか私という馬鹿者は。本当にものを知らずに生きてきたと思う。今からどれだけ巻き返せることやら。