ボールとポールを取ってホールを付けたい

男の身体のままで死にたくはない。

ジェンクリ #90

TRP初日でしたが、引っ越し関連の対応をしていたら全く情報を追えずに通院の時間に。体調の話はそこそこに、自分の立ち位置がわからなくなっている……という語りに主治医の時間を取らせてしまいました。

 

職場で先日あった考課面談。ウルフ程度の長さではあるけれど髪を隠さないで出勤しているので、何か言われるかヒヤヒヤしていたのに結局またも何も言われなかったといういつもの展開です。「上司はいったい何年、肩を叩くタイミングを窺っているのか」との私の不安を訝しげに聴く主治医。『昨今は容姿について言及するのがタブー、とまではいかなくても控えられている』と言われても、そうは思えない。職場でも髪を隠したりジェンダー関連の話題を言わないよう努めたりと徹底して"逆埋没"に勤しんでいる私ですが、こういうことをし続け、また統一地方選やTRPに際して昨今の性的マイノリティを巡る言説にいつも以上に目を通す中で思うところがあります。それは、「(ノンバイナリ含む広義の)トランスは、皆"品行方正"でなくてはいけないのだろうか」ということ。

デモの一員として"権利"を訴えようとする傍ら、思想としてはTERF寄りの私は思っていました。「差別をされたくないんだったら、差別されないような外見と振る舞いをすればいいじゃないか」と。事実、私自身はそれで職場で追及されずにすんでいる。一目で出生時の性別が看破される体格と声をしていることもあって、何も言わなければ他人からは「所詮」ただの男だ。当事者として"怪しげ"でなきよう弁えるべきだ。そう思い、振る舞い、同調し、私は私の平穏を4年以上も守ってきた。

でも(平仮名)、*1それで渋谷の道を歩いて良いのか?デモに参加する気があるということは、今の私が持つ思想信条は本心なのだろうか?こんなことをまとまらないままに話し、主治医には迷惑をかけてしまったと反省しています。

 

しかし、話していて少し泣きそうになったのは何故だろうか。診察を終えた帰り道にまた考えていました。本当は……もとい、できることなら。自分のことをオープンにした上で、それを否定されず「そういう人」としてこれまでと変わらず扱われたい。なのに、それが許されない環境下で我慢を強いられており叶わない。それが悔しいんだろうな。まぁ、強い「られて」いるのでは無く、自ら強いているのかもしれないけれど。上司が本当は私の髪を切らせたいのか、それは実際に確かめていないからまだわからない。にもかかわらず、そうに違いないと私は"確信"している。否、信じ込もうとしている。自発的に確信しておけばそこを崩すような行動を私はわざわざしに行かないし、集団を乱さず自身の平穏も守れるから。

主治医はいつものように言った。政治的な立ち位置にしても職場での対応にしても、『決めるのはご自身だから』と。自縄自縛というか、周りより私が一番外見だのジェンダーだの気にしているのかもしれない。「弁えておけば刃は向けられないから」これ自体を目的にして、行きたい先があるのにそれを見ずにいるのかな。どうなんだろう。他称TERFの皆々様、特に「物言う当事者」各位の主張には「そうだそうだ!」と同調してきた私だけれど、今夜から明日にかけては一旦それらを目に入れず、なるべくフラットな状態で代々木公園に身を置きたいと思います。

*1:もし本心からそう考えているのであれば、寧ろカウンターデモを呼び掛けて賛同者を集うか探して参加すれば良かったのではないか?とすら思う。