ボールとポールを取ってホールを付けたい

男の身体のままで死にたくはない。

高さと響き

さてさて例のフェス公演は無事終演と相成りましたが、共演者の音楽仲間(私のフルタイム男子時代を知っており且つ割と付き合いは長め)と話していると、思わぬ方面の指摘を受けました。

 

『あれ、声高くなった?

 

確かにこの1年くらいで普段の声のトーンを上げようと意識しながら喋ってはいますが、いかんせん*1地声があり得んレベルで低いので、自分の意識とは裏腹にできていないだろうと思っていたんです。ところが友人からの評は上述の通り。慌てて「大して変わっていないよ」と返しはしましたが、思いの外声は高くできていたのかも知れません。私の見た目の変遷を経ても尚一緒に音楽をやれている相手なので、今更慌てるまでもなかったと振り返って思います。

 

まぁFtさんの男性ホルモン投与と違って女性ホルモン投与で声は高くならないので、変わっていないというのも嘘ではない。強いて言うならエッジを抜くのと胸に響かないようにはしているかな。元々そんなにダミ声ではないからエッジ抜きは大した変化ではないけれど、声を響かせる位置を変えるのは多少効果があった気がします。女声には程遠くとも「男声とは即断しにくい」感じの響きは出せるようになったかも。ただ、一瞬出せるだけでは意味が無いので維持できるようにならねばね…。

 

あとは、初期にあった「裏声を出そう!」って意識もいつからかしなくなりました。職場の純女さんに結構低めの声の方が多いし直属の上司(純男)がめっちゃ地声の高い方というのもあり、高くし過ぎると却って不自然と実感したので。ミッキーになりたくはない。ハハッ。女声と言っても阿澄佳奈さんとか金田朋子さんのような声ではなく、沢城みゆきさんとか小林ゆうさんのような声を出したいと日々思います。

 

なので、今声で意識しているのは高さというより響きの方ですかね。持って生まれた地声のせいもあってある程度の高さがないと男にしか聞こえませんから、最低限のラインは死守するとして。胸に響かせないこと、それを維持すること。こればかりは日々の訓練なので、早く声パスを実現したいですね。オペせず済めばそれに越したことは無い。

*1:ヘ音記号の五線の下辺り

控え室

音楽をやっていると付いて回るのが「控え室」や「楽屋」の存在。何でこんなことを本ブログで書くかと言うと、音楽活動は色々な所で男女分けがされているからです。*1控え室もその内の一つ。大体の場合に男性用と女性用の最低2つが割り当てられ、そこに押し込められます。

 

実はこの土日に吹奏楽の公募型企画がありそれに参加しているのですが、正にこの控え室で困った話がありまして。

まず午前中に参加者受付をした際に、スタッフさんから諸注意伝達があったんですね。タイムスケジュールとか配布物について聞かされた後、控え室に終夜荷物を置けるとの説明が。その際にスタッフさん(純女)から言われたのが、

 

女性の方はAスタジオになりますのでお間違えの無いようにお願い致します』

 

え、あの。誰も何も言わないの、ねえ。

取り敢えずその場から離れたくて質問とかは特にせず受付を後にしましたが、隣のスタッフさん(純男)も私について何か言っている様子は無かったし、何より私が受付時に声出していたの聴いていましたよね?

多分配慮だとは思いますが一応のパス実績。それはそれで嬉しいけれど、素直に喜べません。着替え等のことを考えると、こうした控え室を(戸籍上の)男女に分けるのは必要だとわかります。どうしても多数派に合わせた部屋割りになるのも仕方ない。少数派は黙って戸籍に合わせた方を使うか若しくは使うなというのが道理でしょう。スタッフさんに指示された方には私は入れないし、逆も私の性別云々を既知の人とお初の人が混在しているので入り辛い。お初の人に『こっち違いますよ!』とか言われて既知の人と私とで「いいえ、その…」とかいうシチュエーションが起こるのも嫌だし。

要は男女の枠組みに当てはまらない人にとって、男女分けされた区画はトラブルの元になるとか居心地が悪いとかで使いにくい」って話です。色んなことに言えますけれど。

 

なので今回は仮に受付の目を誤魔化せたにしても、私は男女どちらの控え室も多分使わないし荷物も置かないと思います。まぁ「使わない」という選択肢が取れるだけマシな方だとは思います。うん。1日ホールを借りるような公演だと、ウォーミングアップに加えて盗難や食事の問題も関わってくるので、使わざるを得ませんもの。今回は様々な団体が出演するフェス的な公演だったので使わないでいられるけれど、運営母体のことを考えるとなおのこと男女分けの問題は考えて欲しかったなぁ。控え室を男女ではなく楽器別にするとかできると思うので…。

 

あ、普段所属している楽団では戸籍に合わせた楽屋に入っています。念の為補足。しかし、性別移行に伴う諸々も一因として休団した古巣楽団が本番の楽屋を楽器別にしていたというのも皮肉な話。

*1:他には衣装とかプロ奏者の男女比とか歌のパートとか設営人員の割振とか。私の観測範囲なのでクラシックに偏ってはいますが。

さよならネクタイ

5月最終日。来週はもう6月。

ということで、土日を挟めばようやくクールビズ解禁です。(スーツ必須の職場においては)男性の象徴たるネクタイ…日に日に嫌になっていったこいつとも暫しの別れ。

 

とは言ったものの、10月1日にはまた再会せねばならないのが辛いところ。クールビズは6月から9月までなので、実に1年の2/3はネクタイを締めていることになるんですよね…。多過ぎでしょ。服の色に合わせるとかいいデザインのものに絞るとかで努力はしていましたが、フルタイムになれば永遠に締めなくても良くなるのにと何度思ったか。そんな日は本当に来るのだろうか。

 

*1今はネクタイを外してこの記事を書いていますが、それだけでも少しは男感が薄れる感じがするんですよ。だからこそこの期間は助かります。でもそもそもクールビズだろうが何だろうが、男性のビジネススタイルってバリエーションが狭い!

 

三角の 襟付きシャツに スラックス

ベルト革靴 基本の形

 

と一句詠めるくらいには()

この範囲であれこれ弄っても、生まれが男性だと男性らしさを消すのは相当難しいような…。

 

ともあれ、来週からはネクタイの要らない生活(期間限定)のスタート。初日に注視しておきたいのはどの位の割合で「初日即クールビズ」をキメてくる職員がいるのか。特に偉い人達はどうか。「今日から変わる」というのは偉い人が率先して示さないと下は動き(け)ませんからね。何やら月曜の朝には落胆している予感がしますが、ひとまず自分自身はさよならネクタイということで気分を上げていこうと思います。

*1:そもそもの服装含めたルックスはちょっと置いといて。

歓送迎会

入ってきた人あれば抜ける人あり。来月に私の部署で歓送迎会が行われるとのメールが本日回ってきました。

 

私は安定の、見てすぐ欠席返信!たとえそれが今となってはたった一人の同期を送り出すものであっても、職場のメンバーと業務時間外にやり取りを強いられるのは避けたいものです。時期も演奏会本番直前だしね。

自分を偽らずに職場で過ごせている方にとっては楽しい機会なんでしょう。しかし、性別とか趣味のこととか色々隠している私にとっては、いつ地雷を踏まれるかわからない罰ゲーム。隠しているのは、そのことに対して多くの人が偏見を抱いているだろうという凡そ当たっていると思われる想定に基づきますが、それ以上に職場のメンバーとの接触を避ける理由があります。

「誰かが私と話す度に、その人に”男としての私”の記憶が上書きされていく」ことが耐えがたい。これに尽きます。散々言及しているように弊社はいつでもどこでも男女分けたがる風土ですから、「(ただの)○○さん」ではなく「男/女性の○○君/さん」という見方が先に来る。これは後々のことを考えると非常にリスキーだと考えています。この辺は幾らでも語れそうですが、まぁそんな感じの理由で職場の飲み会の類には極力顔を出さないようにしています。前回は幹事やらされたし、今回の幹事に集金等々の資料も提供したいいいでしょ…?

 

私が弊社を去る時には強く強く頼み込んで、送別会は固辞させて頂こう。外的な事情で本人の意思に反して去らざるを得ないならまだしも、去りたくて去るのに送別会やられても…って思いますね。オナニーはよそでやってどうぞ。

セカンドオピニオン

のクリニックに行ってきました。幸いにも仕事帰りに寄れる所…でしたが、職場から直で行くことになるので服装に悩みました。一応はGIDの治療に関することだから、完全B面ってのは気が引けるというかOKが出ないかもと不安だったというか。結局は、普段使っているメンズ黒ジャケットの下に厚手の白Tシャツ、ボトムスには黒の割とヒラヒラしたワイドパンツという簡易OL(Office Ladyboy)スタイル。靴はユニセックスなデザインのタッセルローファー。

 

さて駅から少し歩いてクリニックに到着。殺風景な印象ですが、患者さんの為に可能な限り刺激を少なくしようという取り組みが見て取れます。電話はコール音が鳴らず(恐らくディスプレイの点滅で出ている)、椅子が前のみを向いており患者さん同士が目を合わせることの無いセッティング。また、診察から会計まで呼ばれるのは番号というのも安心です。

 

呼ばれて入室すると少し白髪の入った中年のDrが。受付でお渡しした意見書に真剣な面持ちで目を通されます…。しかし質問責めに遭うことも無く、ほんの少しの確認事項に答えてすぐに『意見書を作成できます』とのお言葉。ありがたくはありますが、こちらが心配になる程サクッと終わったセカンドオピニオンでした。自分史の書き方が良かったのかしら…そう思っておきましょうかね。

 

最後に会計を済ませて財布の中も軽くなり、ようやくホルモン治療のお墨付きを得ることができました。形式的な手続きと言ってしまえばそれまでですが、アンダーグラウンドではないという証明が*1もしもの時には役立つこともあるでしょう。

さぁ、これで来月からホルモンは塗り薬から注射に切り替え。なんだけど、後は胸のこととスケジュールが問題…遅くとも7月中には乳がん検診を受けたいし、ジェンクリは定時ダッシュでも間に合わぬ。このことは最近何度も書いているけれど、なるべく安定した状態をキープしたいので大切です。

*1:職場カムとか…ね。

意見書

明日はいよいよ主治医から紹介されたセカンドオピニオンのクリニック。そこの医師からホルモン治療に関する意見書を確認の上サインを頂ければ、晴れてガイドラインに沿ったホルモン治療のお墨付きが得られる訳です。

コンスタントに注射を打ちに行けるスケジュールの確保とか、乳がん検診をいつ受けるかとか、懸案事項はそれなりにありますが、正当な形で治療を受けているという事実はこれから何をするにせよ安心材料になります。主に他の診療科にかかる際のカミングアウトに関して…服薬とか風貌とかね。

 

肝心の意見書は外性器と染色体検査の結果に始まり、これまでの経過が記されています。とは言え、現病歴はほぼ自分史によるものですが。社会的適応について「男性として真に良好な社会適応はしてこなかった」と書かれてしまうと、何というか「くる」ものがありますね…。違和感を押し殺してきて結局は無理だったのですから。今だって、表面的には適応している風に見せているだけ。ガイドラインによる治療開始の条件を概ね備えているとは主治医の評ですが、カミングアウト等への対処は不安が残るところ。”決定的な相手”に対しては隠すことで成り立っているかりそめの平穏なのでね…。

 

ともあれ明日は大事な日。仕事帰りに行くので、突発的な残業が無いことを祈るばかり。

お咎め無し

昨日からの5月とは思えぬ暑さ。今まで出勤時だけでなく勤務時間中ずっと上着を着ていた私も流石に耐えられず”違反行為"に出てしまいました。

 

そう、上着を着ずに出勤したのです。入室時までに偉い人に見られたら即アウト。いつもより警戒しての出勤だったのですが…。同じ課の先輩や他課の管理職(計3名)に姿を見られましたが、結論を言うとお咎め無しでした。部署のある部屋に入る時はロッカールームを経ている(そこに上着を置いている)職員も多いので、着て来たかどうかは入室すればわかりません。一つの勝利を収めた瞬間でした。

上着が無いことで浮上する”双丘問題”は保護をしないことでカバー。物理的なカバーはできませんが、パッドのズレでしこり部分が擦れて痛むことも無いので、ぶつけないよう気をつけさえすれば平和です。双丘と便宜的に呼んではいるものの平野なので、形についてはまだ大丈夫だと信じたい。本当は着けた方が良いんだろうけどね…

 

そしてもう一つの懸念材料がベルト。スーツスタイルでボトムスにベルト必須って男性特有じゃないですか。だから上着を着ている間は頑なにベルトを巻いていなかったんですね。真正面から見ればバックルが無いのですぐわかる筈ですが、これまで何もお咎めが無かった。しかし流石にスラックスが剥き出しになるとばれて何か言われそうなので、仕方無くベルトだけはして行きました。レディースだけどな!ユニセックスなデザインなのでギリギリの妥協点。

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…とまぁ、*1”違反”をしても何ともなかったクールビズ前の上着無し出勤初日。違反と書いてはいますが、実は就業規則に照らしてみると服装の指定が無いので、「職場全体での暗黙の了解をちょっと無視しただけ」という状態なのがお咎め無しの理由としてあるのかも知れません。

就業規則に具体的な定めも書かずに「定められた服装にて勤務」とだけ書いて*240年間も放置しているくらいだし、もしかしてそれっぽく見えていれば細かくは見ていないのか…?前職でかなり細かく指摘されたので慎重になっていたのだけれど。業界も求められる役割も違ったせいもあろう。

なので明日も上着は持たずに出勤かしら。冷房がそこそこ効いていたので、いい加減薄手のカーディガンを調達しよう。そうすればベルトをしなくて済む(誤魔化せる)。

 

…しょうもないことを何大真面目に書いているんだと思う方もいましょうが、私にとっては死活問題ということだけご理解頂きたく。自身の違和感と職場内の空気との鬩ぎ合いの中で均衡を保つのにこれでも必死なのです。

*1:ベルトはしていますが…。

*2:この項については規則に設けられて以降改訂が無い。