ボールとポールを取ってホールを付けたい

男の身体のままで死にたくはない。

その髪型って

午前中、業務でよく絡む例のパートさんとの間であった話。

 

書類を受け取って自席に戻ろうとした時、遂にこの話題が出てしまいました。

『○○君のその髪型って、特に刈り上げとかせずそのまま伸ばしてるんですか?』

 

まずい。

 

まずい。まずい。

 

言われた。終わる。広まる?クビに?

 

何て返す?誤魔化すか?誤魔化しきれないかも?いや、でも。

 

 

2〜3秒の間にこれだけの思考が浮かぶ。言葉の選択一つで運命が決まる。来るべき時が来てしまったとも思う。黙り過ぎて不自然と思われる前に、取り敢えず「いや、刈り上げてはいないですけど…」と返答する。すると、

『髪上げて結ぶと下の所全部刈ってる男の人とかいるじゃないですか?だからどうなのかなーって』

と返された。よし、これなら誤魔化せるが長くは保たない。さっさと切り上げよう。そう思い「下全部刈るとかしませんよw、髪無いって一番嫌なことですもん…この前も父から禿げが進んできたとか物騒なメールが来たし」と、鉄板の「薄毛開始まで伸ばしておく」論で切り返す。これは以前も相手には理由として挙げていたりする。

『でも髪すごくしっかりしてそうだからそんな感じしないですけどねー』

ぐぬぬ、鋭い。担当の美容師さんから薄毛にはならないだろうとお墨付きを頂いている私の髪質を見抜いたか。「いやでも遺伝っていつ発現するかわからないし怖いですよ」と返しつつ、預かった書類の処理に関して確認。半ば強引に話を切ってしまった感はありましたが、息の詰まる空間から出ることに成功しました(この時室内には私達2人だけ)。

 

あー怖かった。自分とて生半可な決意と覚悟で髪を伸ばしてはいないけれど、いざ触れられるとこんなに取り乱してしまうなんて。相手が直接の指揮系統上ではなく、私が生殺与奪を握られている訳でもない。でも、どんな価値観での言葉が飛んでくるかと不安で仕方なかった。

『切らないんですか?』『変ですよ』『みっともない』『不衛生ですって』『男らしくない』『(上司)さんに言われません?』

心配していたのはこんな言葉。それが出ず、"ロン毛の男性"の例を出してきた所は少しホッとしました。ご自身があれこれ言える立場ではないという判断なのでしょうか。それとも『そういう人もいる』と思っているのでしょうか。何であれ、「男性」という枠から決して出ずに話が進んだのは私の服装込でのノンパスっぷりが示されたということだと思われます。相手も今までのやり取りだと性的少数者の存在を全く意識に上げていません(やり取りからは少なくともそう考えられます)。私がもう少し"あからさま"だったら勘付くのかも知れませんが、そこは安心する一方で少し悔しくもあったり。自分はどうやっても「男性」の軛から逃れられないのか…と。

 

うーん、今回に関しては断髪勧告とかカミングアウトとかの"決定的事態"にならなかっただけ良しとしますか。ほんと、踏み切れる人って尊敬する。心臓に悪いイベントは、実母の誕生日だけで十分だよ。