ボールとポールを取ってホールを付けたい

男の身体のままで死にたくはない。

ほらやっぱり女性ホルモンは

怖い薬だ悪なんだ!との主張をしたいのか、RYUCHELL氏の死去に伴い女性ホルモン投与の悪影響を述べる声が増えています。自殺を誘発するからと。でも果たしてそうでしょうか。

 

当事者であるいち個人の体験談にはなってしまいますが、言わせていただきます。まず、女性ホルモンそのものが問題なわけは無いでしょう。より正確を期すなら、体内のホルモンバランスの急激な変化や長期間の欠乏が心身に悪影響なのであって。肝臓や血液凝固系への負荷は高いのでそこは当然注意するとして、医師の下で量や投与間隔を適正に保てばうまく付き合っていけるものです。

また、何よりホルモン治療の効果の顕れは個人差が非常に大きい。私で言えば残念なことに望んでいた変化はほぼ皆無なわけですが。だから、誰もが女性ホルモン→即・鬱状態!とは限らない。それよりも、メンタルへの影響は個々人の生活をトータルで見て考えねばいけない事柄。人は投薬のみで生きるに非ず。

 

でもそもそもこの話、トランスに限らず「女性ホルモンの補充療法を受けている人」という括りで見ると、卵巣摘出や更年期障害等で投与を受けている人達も踏むのでは?或いは「女性ホルモンが優位に分泌されている人」まで踏む対象が拡がりませんか?そこで、いや『生物学的』女性は違うんだ身体男性の場合だけだと言うのなら、「女性ホルモンは前立腺疾患の治療にも使われていますが?」と返しましょう。ホルモンだけを悪者にしようとすると、多くの人をめちゃくちゃに踏み荒らすことになりはしませんかね。

 

適正な使い方をしなければ悪影響はあるでしょうよ。だからホルモンなど打って「薬漬け」になるべきではなく、「自然」のままで多様性として包摂されることを目指すんだ!とする考え方も出てくるでしょう。「男女」として許容される範囲さえ狭いのですから、私としては「○性の多様性」という思想自体を否定したくはありません。しかし、女性ホルモンのせいで彼は自殺にまで至ったんだ心を壊すんだやっぱり怖い!と言うことで飛び火する先があまりに多すぎる。ホルモン治療に対する認識だって雑も雑。氏が女性ホルモン投与を受けていたかどうか、明言も無いのに。

所詮n=1と言われればそれまでですが、ホルモン補充療法を受けるトランスが此度のセンセーショナルな主張に首を縦に振るとは私には考え難いのです。

 

……もしかしたら、私は割と怒っているのかもしれない。雑な認識と憶測で経験者を置き去りにしてホルモン治療のあれこれを語るな!と。性的マイノリティを巡る別の局面では同調を示すことの多い陣営であっても、流石に今回は同意も看過もできない……そんな思いです。