ボールとポールを取ってホールを付けたい

男の身体のままで死にたくはない。

現場にて

先月末、ようやくインフルエンザの予防接種を受けました。場所はなんと職場。健診機関なので職員は無料で日時も融通が利く、そこだけ切り取ればまぁ恵まれている方かと思います。そんな予防接種の場で感じたことについて。

 

当日の午後、仕事のキリがちょうど良い時間帯に検査エリアに向かった私。手元には問診票。体温計を置いてある部屋が会議で使用中だったので体温欄と、そして当然性別欄はブランクで。

検査エリアに到着すると、備付の体温計でNsさん(うちの職員)に体温を測られました。今は額から一瞬で測れる物があるんですね。その後、問診票で既往等の確認。最後に問診票を回収される前に案の定と言うべきか、訊かれました。

 

「男性でよろしかったですか」

 

やっぱりか…と落胆しつつも自分の口から「はい」とはどうしても言いたくなかったので、「すいません未記入多かったみたいで…」と取り繕って予防接種を受けました。今後受けるであろうホルモン注射の為に筋肉注射の痛みを覚えておく余裕も無く、落胆の中でワクチンが注入されていく。接種後の諸注意が書かれた髪を受け取りオフィスに戻りました。

 

いやまぁ、私は職場に対してクローゼットだし、すっぴんな上にメンズスーツで髪も耳に掛けて誤魔化しているので、それで「(私の事情を)わかれ」とは言えません。でも、日々何十名もの患者さんと相対している中で「全員が気兼ねなく健康診断を受けられる人ばかりとは限らない」ことへの想像力が(少なくとも今回の私のケースにおいては)見られなかったのは哀しいことです。性別もそう、言語もそう、感覚の違い(視覚/聴覚どちらが優位か、感覚過敏と鈍麻、等々)もそう。前線に…現場にいて直接お客さんの顔を見る人には持っておいて欲しかったです、自分と違う他者への想像力を。

 

「そういう人」が多く来て顕在化しないと対策って取られないのかしら。時代の流れを見て先手を打って現場職員の研修とかできないのかしら。企業相手にこちらが出向く測れる方の健診だと、外国ルーツの従業員を多数抱える企業の健診も数社受託しているのに。

あぁ、性別に違和感を抱える人はこういうことの積み重ねで医療機関から足が遠のいていくんだろうなぁ…と思いましたよ。接種後の諸注意の紙の項目を「12356」と忌み数の4を抜いて作る労力を、もっと現代的な配慮に向けて下さいな。いっそ私が研修でもやってやりたい。