ボールとポールを取ってホールを付けたい

男の身体のままで死にたくはない。

ジェンクリ #38

ハロウィン当日。年末年始に向けた調整の都合で3週間振りのジェンクリでした。午前中の早い時間帯でしたが患者さんは既に多く、膝を抱えて部屋の片隅で不安には震えず呼ばれるのを待っていました。

 

幸いにもすぐに呼ばれて診察室へ。特に大きな出来事はありませんでしたが、トランス当事者の中で俗に言われる*1素質」の無さに悩み続けた3週間であると打ち明けました。先週末に通行人からすれ違いざまに『キモッ』と捨て台詞を吐かれた経験や、ネット上での他の当事者を見てきて感じたことがきっかけとしてはありますが、元々は移行を決意してからずっと悩んできたこと。身長、体格、顔立ち、体毛、声……あらゆる点で女性に見られることが望めないので、それならいっそ治療を辞めたほうがいいのではとの思いがよぎったことも正直に主治医へ。

すると主治医ったら、『!?』とでもいう驚いた表情で笑うんですもの。続けて『えwwwいや、だいぶ恵まれている方だと思いますよ??』と。何そのコメント。お世辞だとしてもこっちがびっくりだよ。主治医曰く、私が上記のようなことを考えているとは思えずすごく意外だったそうな。この見た目で、考えないとでも思っていたんですか……。主治医からパスや素質に関する言及があったのって、実は初めて。頂いた言葉は嬉しくはありますが、自他の評価があまりに違うことでなんだか混乱しています。

私としては今の所、自身の「素質」の無さが苦しくても治療を止めるつもりはありません。detransitionした場合のことは何度も想像しましたが、今よりも社会的に苦しむことが増えるとしか思えないからです。外見、声、職場や実家での立場……。立場に関しては『普通に戻ってくれた』ことで表面的には確実に安定しますが、果たして私の内側はどうかという話で。だから、よりQOLを上げていくことを目指して治療等を続けてはいきますが、それは「素質」の無さという苦しみを抱えながらである……という決意表明を、話しながら整理していったような具合でした。主治医は最後まで「素質」に関する私の見解に納得してはおられないようでしたが。

 

『(私)さんの気持ちや周りのことを大切にしながら自己実現に向けて進んでいければ良いですね』というのはまさしくおっしゃる通りで。諸々の事情が絡んで一足飛びにとはいきませんが、うまくバランスを取りつつ突破口を見付けられればと考えています。

*1:移行先の性別に見える特徴を生まれつきどれほど有しているかの程度。MtFで言えば小柄、体毛が少ない、顔が薄い等。FtMで言えば長身、骨盤が狭い等。