ボールとポールを取ってホールを付けたい

男の身体のままで死にたくはない。

除睾哀史・残照編 #7 術後1年

9月14日。本日、睾丸摘出から術後1年が経ちました。思ったより早かったですね。午前中に手術だったので、仕事をしながらあの日のことが思い出されました。電車が止まって急遽迂回してギリギリ間に合ったとか、「去年の今頃は麻酔を入れられていたなぁ」とか、翌日から全然眠れない日がしばらく続いたこととか。あれこれありましたが、致命的なこともなく今こうして過ごせているのはありがたいと感じます。当事者内だとサラッと受けている印象の手術だけれど、臓器を取っていますからねぇ。評判の良い医療機関が通える範囲にあって良かったですよ。足を向けて寝られません。

 

外見的には結局全くと言っていいほど変化が無かった私。それでも、ホルモン投与の度に起こる"復活の恐怖"に怯えず良くなったことで心持ちはだいぶ変わりました。"本丸"がまだ残ってはいても物理的な嵩が減って、日常的に感じる不快感も多少は緩和されているし。こういうのは「塵も積もれば」です。*1「100%男」の状態から脱せただけでも違う。

この睾丸摘出手術によって私はもっと喜ぶようになる……と術前は思っていました。しかし術後に感じたのは、心のになったとでも形容できそうな感覚。安心だったり赦しだったり、自身にあった「男であることのノイズ」が削がれたような。アップダウンが激しいよりは、こっちの方が私の性(しょう)にも合っているのかも。いや、この状態を維持できているのは医療アクセスに恵まれたからこそ。当たり前だと思わず、安全に「男ではない」人生を紡いでいきたいものです。

 

「除睾哀史」として手術にまつわるあれこれを述べてきた本シリーズ。術後1年の本日を以て不定期連載は(とりあえず)終了させて頂きます。残照編じゃなく番外編とかが投稿された時には、それだけの出来事があったのだと思ってください。体験記や闘病記として参考にしてくださる方が現れるのであれば、望外の喜びです。


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*1:社会的な扱いは未だ100%男ですが……。