ボールとポールを取ってホールを付けたい

男の身体のままで死にたくはない。

鏡をのぞけば 〜押された背中〜

YouTube動画「トランスジェンダーのリアル」シリーズや同名の冊子で知られる河上リサさんが監督されたショートムービー「鏡をのぞけば 〜押された背中〜」。こちらを上映初日の本日、鑑賞してきました。脚本を手がけられた奥村ひろさんとは、数年前に性的マイノリティの交流イベントでお知り合いになり、モノローグ台本等を書かれているのは存じていました。それが今回は映画脚本ということで興味が湧いた……というのも、鑑賞の動機の一つです。

昨今少しずつではあるが出てきている「トランス当事者が当事者を演じる映画」。公共施設の一室を利用した小ぢんまりとした上映会でしたが、これは飛躍の第一歩であったと、そう私は思います。


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詳しく感想を述べようとするとネタバレになってしまうのが心苦しい。でも願わくば語りたいしリピートしてもっと色々な思いを心にとどめたいと思わせる作品でした。というか、私が*1あわや号泣かという程に涙ぐんで鼻水でぐじゃぐじゃになるだなんて。

 

私が一番考えたいのは、タイトルの意味。鏡も背中を押すという言葉も劇中の早い段階で登場しました。予告編でもメイク道具を机に置き鏡を覗く「あきら」(演:奥村さん)の姿があったと記憶しています。しかし私はそこではなく、「ともね」(演:河上さん)視点から編まれた言葉なのではないかと想像します。*2性別移行を始めたいと訴える「あきら」に対して「ともね」がかけた言葉。それは単なる世間の厳しさだったのでしょうか。

ネット上ではこのくらいにとどめておきますが、偽ったり我慢したりせずに過去と連続性を持った存在としての自分が受容されることの大切さが私は身に沁みました。現在進行形でその殆どを封じ悟られまいと振る舞う私が言っても説得力は無いと思いますがね。それでも、自分がいつかまかり間違ってそのフェイズに至れた時は、きっと今日以上の大粒の涙を流すのでしょう。

 

この度は、希望を持ちたいと思える作品を生み出してくださって本当にありがとうございました。自分の周りの"世間"との折り合いや自身が生きている間はどうか……と考えるとどうしても風見鶏ムーブをかましてしまう私ですが、今日流した涙はもしかしたら答えの一つなのかもしれません。

*1:他の方もおられる場だったので堪えましたが。

*2:劇中では装いという点がクローズアップされていますが、身体への嫌悪感とか治療状況とか、触れられていないこともおそらくあると思います。服装を変えたから急に、とかそういう話では当然無いわけで。