ボールとポールを取ってホールを付けたい

男の身体のままで死にたくはない。

ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき

本日は待望の映画「ぼくが性別『ゼロ』に戻るとき」を鑑賞してまいりました。場所は2年弱振りに訪れるアップリンク渋谷。何ともうまい具合に降雨を回避し辿り着くことができました。「職セク」でもお世話になっている営業スタッフFさんとも5ヶ月振りの再会。

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実はこちらの映画、昨秋に以前のバージョンを一度拝見しております。今回はタイトルも変え、COVID-19の影響により延期の憂き目に遭いながらも遂に劇場上映という形で世に出ることとなりました。

(前回の様子は下記。以下は一部ネタバレを含みますのでご容赦願います。)

 

julia88h.hatenablog.com

 

主人公に焦点を当てて観ていた前回と異なり、その周囲の人々の反応や語りに意識を向けながらの視聴となりました。ネタバレを経験済故にその余裕ができたとも、私の"世間"に対する懸念がより鮮明になってきたとも言えます。八代みゆきさんの同窓会で学友から出た『もしこのことが世の中に出たら大変ですよ、男が女になっただなんて』との言葉や、gid.jp代表の山本蘭さんが語った世間体を巡る実親との確執や『二度と敷居を跨ぐな』と告げられた訣別…。年齢だけで言えば主人公に近くても、私だってもう中年と称される歳。抱える背景やその諦念・悲しみは、このお二方の方が近いものを覚えました。

 

そんなことを思いながら、上映後の監督と主人公によるトークショー*1働き方にもよりますが、どうしても性別ありきの関係性や立ち居振舞いが求められることの多い社会に在って、それらに左右されず過ごすようになった主人公の強さが光りました。居心地の良い場所を自ら探し作り空気を変えていくと、『だって何も悪いことはしていない』と。そう語る主人公の言葉にはハッとさせられながらも、一方では真似できないと感じる自分を見付ける。

悪いこと…どうなんでしょう。今の私には世間に仇なすことは悪いとしか思えずにいます。親不孝、家督継承順位1位の放棄、出世頭に対する妨害、風紀の乱れ。私がこれからやることは絶対悪なのか、それとも生育歴において悪いと刷り込まれたのだけなのか、或いは必ずしも悪くはなくても置かれた文脈では悪と見なされる割合が多いことなのか。臆病な私に今できることは、自らの居場所を自ら探していく主人公の意志と言葉を心に留めることくらい。その背中を視界に入れながら、いつか私にとって居心地の良い場所ができることを願いゆっくりでも歩いていければと思います。

 

だって何も悪いことはしていない

本当に、この言葉を聴けただけでも今日あの場に足を運んだ意味がありました。

*1:業界、職種、雇用形態、そもそも雇われ人か自営か…等々。